新規事業の考え方

新規事業創造のタネ

「株式会社サイバーエージェント・ベンチャーズ」というコーポレートベンチャーキャピタルで、シード投資の仕事をしています。


どんな業務かというと、

・人間はこんな欲求を感じているのではないか?

・この業界ではこんな課題が存在しているのではないか?

という仮説検証を起業家と議論しながら毎日繰り返している感じです。


最近ではバイラルメディアやキュレーションコマースなどのtoC向け事業、特に10代の若者向けの事業をいくつか考えていました。

本記事では新規事業を考えるフレームを整理したので、備忘録がてら以下に纏めます。

2つのアプローチで事業を考える

①社内で新規事業を考える場合(既存プロジェクトの改善案含む)

私達は、起業家と「誰の、どのような課題を解決するのか?」という議論を頻繁に行っています。

社内での新規事業起案(イントレプレナー)においても同様で、どの視点から思考を始めるかによって、同じ時間を費やしても最終的なアウトプットに大きな影響を与えます。

イントレプレナーにおいては、個人と組織、2つの視点があります。

・個人視点

 - 自己成長(自己実現)

 - 自己顕示(承認欲求)

・組織視点

 - 会社の発展

 - 事業部の成功

 - チームの成功

視点によって思考のアプローチが変わり、アプローチが変わることによって産まれてくるアイデアが大きく変化します。

ベンチャーキャピタルは投資元本を増やして利益を得る業態なので、小さな問題解決よりも大きな問題解決、小さな市場よりも大きな市場に対してビジネスを展開したいというバイアスが働きます。

市場規模と課題の強弱は必ずしもリンクしないため、まず経営者の視点から課題を俯瞰し、優先度と難易度が高そうなものをリストアップして、そこから優先度をつけて取捨選択をしていきます。

この作業を行っていく時点では課題設定がやわらかい状態のため、「課題の本質」「現在のボトルネック」「今後の障壁」等がよく分かりません。

なので、一番知っていそうな人に自ら仮説をもって議論しに行き、情報を整理して仮説と現実を繋げていき、構築していきました。「課題は現場が一番知っている」という有名な言葉がありますが、能動的に課題を探し、拾いにいきます。

ヒアリング(市場との対話)を繰り返してはプランを作る、という過程で得られる情報は一般的なメディアには到底落ちていない情報になっていくのでこ、の時点で非常に貴重な示唆が得られます。

こちらの作業を繰り返していくと大体10案くらいあったものが全部消えるか、かろうじて1案残るかくらいになると思います。

なので、このプロセスをひたすら繰り返すのが最適解であると考えています。

②投資家として考える場合

上記の視点を持った上で、今回は投資家の視点からも事業精査を行いました。投資家として考える場合、以下3つの要素を最も重要視し、並び通りの順に考えています。

マーケット

 →経営チーム

   →戦略

・マーケット

まず一番最初に見るのは他でもなくマーケット(対象となる市場の大きさ)です。マーケットが一番上に来ている理由は、ベンチャーが少ない資産で戦っていく上で市場が小さいと全く勝負にならず、そのまま立ち上がらずに死んでしまうからです。

ベンチャーは事業を創出後、市場に陣取り、会社を成立させることが第一関門です。対象となる市場が小さければ(少なくとも投資家の視点では)魅力的に映りませんし、立ち上げることが至難の業であり、かつ大手企業の参入後に取りうる市場の余地もほとんど残らないような市場で勝っていくのは非常に困難だと考えています。

市場の大きさは欲求・課題の強さを踏まえて、余分な要素が削ぎ落とされた状態の「真の市場規模」を正確に把握することが重要です。。

研究所などがリサーチとして出している「○○業界の市場規模●兆円」といったマクロかつ網羅的なデータではなく、対象となる顧客をしっかりと捉えて算出した市場規模を我々のチームでは「真の市場規模」と呼んでいます。

これを社内の事業プランに落とすとすれば、提案しようとしているプランの課題/欲求は"何人が""どれくらいの強さで"感じており、解決することによって何が"生まれ"、何が"失われる"のかを考えるのがよいのではないでしょうか。

- 一見すると小さな問題だが、実は気付けていない大きな課題

- 緊急度が低いので後回しになっているが、長期的に必ず立ちはだかる課題

- 気づいていないが、満たすことによって大きなリターンが期待できる欲求

個人的にはプランを考えるに当たり、このあたりを紐解いていくのが好きです。

・経営チーム

次に見るのは経営チームです。

大きなビジョン(Big Picture)を描き、そこに緻密な字(Detail)を精密に書くことができる経営者、ないしはチームを「良いチーム」と定義しています。

マーケットが十分にあるという前提の上で、チームが事業を成功させるために必要な要素を満たせているのか?という部分を考えます。

ポイントは、「今出来ているか」よりも「正しく認識できているか」という点です。

シード~アーリー期においては当然全てが揃っている状態ではなく、何かが抜け落ちていることがほとんどです。逆に、全てが揃っている場合、少し違和感を感じます。チームの評価は定性的な勘所なので意見も割れやすく表現しにくい部分なのですが、なるべく言語化することを意識しています。

こちらも社内の事業プランに落とすとすれば、そのプランを実行するために必要な要素は何で、誰がそれを持っており、最適な布陣は何か?という問いに答えられていると良いのではないでしょうか。

起業家と違い、社内でアサインする人は多くの場合重要な仕事を任されていることが多いので(成功に必要な要素を持っている人は既に要所を担っている)その人がこの事業をやった場合のゲインとロスを考えられていると良いかと思います。

・戦略

最後に戦略です。戦略は事業によって大きく内容が異なるのでここでは一般論を述べますが、個人的に好きなのは「エグゼキューション(実行)してナンボ」という思想です。

参考:「大切なのはアイデアをエグゼキューションする力」(GREE堤さん)

   「アイディアには価値が無い。エグゼキューションにこそ価値がある」(宗像さん)

なので、マーケットがあり、ビジョンを実現できる経営チームが揃った後、いかにしてそのビジョンを現実世界に落としていくのか、という部分が戦略にあたります。

大体1ヶ月に40-50人(≒社)くらいの起業家にお会いしているのですが、シリアルアントレプレナーや新規事業の創出経験が豊富な起業家であるほど

「いかにして成功させるか」の"How"部分が極めて緻密に練られていると感じます。

社内の事業プランを考える上ではそこまで参考にならないかもしれませんが、”How”の部分が無ければどれだけ崇高なビジョンを掲げても思想が現実化していきません。マーケットがあり、経営チームが揃えば面白い事業である確率が高いと思われるので、ここまで来たら折角なので考えぬいてもよいかと思います。

戦略の部分は明確にしていく過程で得られる示唆が非常に多く、なおかつ「事業化に寄り添える」部分でもあるので、起業家とキャピタリストで議題を決めて、実行計画を考えきる目的で合宿を行ったりもしています。


以上のような流れで思考をしておりました。

一連の過程が非常に勉強になったのでまとめてみましたが、少しでも誰かの参考になれば嬉しいです。

【お知らせ】

株式会社サイバーエージェント・ベンチャーズは、2014年12月1日よりシード期のスタートアップ支援を目的としたファンド「Seed Generator Fund」を設立しました。


【メディア掲載】

The Bridge:サイバーエージェント・ベンチャーズ、3億円のシード企業支援枠「Seed Generator Fund」を開始