昨日書いたブログでもご紹介した本書ですが、事前に想定していたレベルの10倍くらい面白かったのでいくつか参考になった点を紹介したいと思います。
■著者について
・茂登山 長市郎(もとやま ちょういちろう) 1921年(大正10年)東京日本橋生まれ。(株)サンモトヤマ会長。グッチ、エルメス、ロエベ等世界の一流ファッションブランドを日本人に広め、定着させた江戸前の商人。生家はメリヤス卸問屋。41年応召、中国各地を転戦。復員後主にアメリカ製品を闇で扱う商売から身を起こした。64年東京オリンピックの年に、銀座並木通りに本店をオープン
■読んでて気になった所の紹介
この茂登山さんというお方、東京は日本橋でニット製品を取り扱う「メリヤス問屋」を営んでいたお祖父さんの影響を受け、商人(あきんど)として「欧州の文化を日本に伝える」という夢を持ちました。
結果、上記のような一流ブランドを日本で初めて販売することに成功するわけですが、本書では茂登山さんの半生を振り返りながら、「いかにして一流ブランドを日本で初めて販売するに至ったか」また、「商売の本質とは何か」について書かれています。
いくつか面白かったポイントを引用してご紹介します。
・机の前に座っていたって何も始まらない
一回断られて、それで諦めてしまうのは、その程度の情熱しかないからです。「ああ、ダメだったか」でおしまいにしてしまえる程度の情けない夢なら、誰だって持ち合わせてますよ。そんなちっぽけな夢なら、諦めればそれでいい。
それからも、僕は毎年のようにヨーロッパに行き、そのたびにエルメスで「ノン」と冷たくあしらわれ、グッチで笑いながら拒絶された。それでも、僕は諦めなかった。いまの人は一回ダメだと、すぐに諦めてしまうでしょう。ひどいもんですよ、「交渉してこい」と言ったって、「ダメでした」ってすぐ帰ってくるんだから。それじゃ、まるで子供の使いだよ。
一回断られて、それで諦めてしまうのは、その程度の情熱しかないからです。「ああ、ダメだったか」でおしまいにしてしまえる程度の情けない夢なら、誰だって持ち合わせてますよ。そんなちっぽけな夢なら、諦めればそれでいい。
以前、丁稚奉公てきに弟子入りをさせてもらっていた社長さんがいるのですが、当時営業の訓練を受けていたぼくに「断られてからが営業のスタートだろう!」という名言をくださいました。
本書を読んでいると、茂登山さんがエルメスの本店に最初に赴いてから取引を開始するまでに約7年が経過しています。
普段はスタートアップの世界で過ごしていますのであまり悠長なことは言っていられないのですが、一方で信用をゼロから積み上げたり、誰も成し遂げたことがないような事を成すには、たいへんな努力が必要なんだなぁと思います。
・百見も一触にしかず
「触る」ことが、僕の仕事で一番大事なことかもしれない。「触れる」という言い方もできるね。もちろん、商品そのものに触れて、手触りを確かめることも重要だけど、時代の息吹に触れることが商売をする上で、一番大切なんだ。時代はいま、どう流れているのか、この先はどうなるのか、その一瞬の息吹を肌で感じることができれば、必ず商売はうまくいく。だから、本や新聞では手に入らない真の情報が自然と入ってくるし、自分で得た情報だから、確信も持てるんです。その意味でも、旅行することが大切ですよ。
今の人は、情報はインターネットから取るものだと思い過ぎていやしませんか。インターネットじゃ、触れないでしょう。息吹を感じ取ることができないでしょう。もっと人間の持っている本能というか、能力を信じないといけない時代になってきてるんじゃないですか。ましてや、情報の持つクオリティなんかインターネットじゃわからない。
ご存知、情報の取得コストはめちゃくちゃ下がっていまして、宮﨑に行かずともIVSの書き起こしが全部読めたりですとか、日経ビジネス、東洋経済などなど、質の高い情報がそこら中に無料で転がりまくっている社会になりました。
情報が氾濫したことにより、「手」触りや「目」利き、「嗅」覚といった五感が鈍るリスクを受容しているような気がします。
良いもの、美しいもの、危険なもの、といった五感を研ぎ澄ましていきたいなぁと思った次第です。
・夢を持ち、爪を研ぎ、チャンスを待つ
夢を持つ、つまり、自分の希望を実現するためには、どうしたらいいか。まず、チャンスを掴むための爪を研いでおくことが必要。能ある鷹じゃないが、自分の才能に磨きをかけながら、チャンスを待つ。これが大切だ。
商人道でいえば、爪を研ぐというのは、商売のカンを養っておく、鋭くしておくということも必要だし、資本金を貯めておくことも、人材をあらかじめ集めておくことも必要でしょう。
もちろん、一度夢を持ったら捨てないという気構えも大切だ。今の人は一回挫折をしてしまうと、もう立ち直れない。誰だってなんにも挫折を経験しないで、一回で夢を叶えてなんかいやしない。失敗したり、落ち込んだりしながら、一歩一歩夢に近付いていくんだから。
若い人の中には、「自分の力を試してみろよ」と言っても、「資本金がない」とか、「時間がない」とか理屈ばかりで、なにもしない人が多いのは情けないですね。
能力を高める努力を怠らない(勤勉であり続ける)ことと、人を裏切らないこと、この2つかと。どちらも当たり前で、どちらも徹底が難しいです。
・天井を設けない
意欲がなければ、夢なんかまったく持てない。なぜ、そんな閉塞状況に置かれているかというと、彼らは井戸の中から天井を見ているからだと、僕は思う。
つまり、日本という国でしか生きられないと思い込んでいるから、コンクリートで固められた日本の社会に押し込められてしまっているんですよ。今の日本の社会は世の中ができあがってしまっているし、資本も一部の人たちの手に押えられてしまっている。だから、「なにかやれ」と言われても、「いまさらひとりでなにができる」と、こうなっちゃう。それに、今の人は情報を持ち過ぎる。それに頭がいいときているから、「ああ、業界はこうだ、ああだ」と考えて、動けない。
でもね、ちょっと視点をずらしてごらんなさい。いま、中国に行く、東南アジアに行く、ロシアに行く。体を張って日本を飛び出していけば、やることなんかいくらでも見つかると思うし、面白いと思いますがね。今頃、たぶん、もうひとりの僕は、どこかほかの国に行って、ビジネス・チャンスを探しているな、きっと。
意欲がなければ、夢なんかまったく持てない。なぜ、そんな閉塞状況に置かれているかというと、彼らは井戸の中から天井を見ているからだと、僕は思う。
つまり、日本という国でしか生きられないと思い込んでいるから、コンクリートで固められた日本の社会に押し込められてしまっているんですよ。今の日本の社会は世の中ができあがってしまっているし、資本も一部の人たちの手に押えられてしまっている。だから、「なにかやれ」と言われても、「いまさらひとりでなにができる」と、こうなっちゃう。それに、今の人は情報を持ち過ぎる。それに頭がいいときているから、「ああ、業界はこうだ、ああだ」と考えて、動けない。
よし、この分野で新規事業を始めるぞーなどと意気込んで、色々とリサーチなどを進めていきますと、気づかないうちに制約を自分で設定してしまうことがあります。
実際ためしにやってみれば成功したこともあるかもしれないですし、500回断られても501回目で断られないかもしれない。
そんな感じで、なかなか気合の入る一冊でした。
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