ビジネス版死滅回遊

先日愛媛の堤防で釣りをしている時、小型の「メッキアジ」という魚が釣れたことがありました。同行者であり僕の釣りの師匠でもある人に聞いた所、このあたりの海域に迷い込むことは死滅回遊といって、黒潮に乗って泳いできた結果、もとの回遊ルートに戻れずに死んでしまう回遊行動とのことです。こうした傾向の魚がいるということを知り、非常に興味深いと感じました。自分自身は回遊ルートを順調に泳ぎ回ってきていたはずが、いつのまにか死ぬしかない海域に着いてしまい、死滅する。同じようなことが、仕事でも言えるのではないでしょうか。


海域は、企業の文化です。ある文化に対して強烈に順応していくと、異なる文化(海域)では生きていけなくなってしまうのかもしれません。これまで 10名, 150名, 1000名, 3000名 といった異なる規模での環境で仕事をしていますが、やはり海域が違えば生きていく術もまったくもって異なります。国が違えば言語や文化が違うように、企業が違えば、そこは全くの別世界。特にサイズが違う企業を渡ってみるとその違いに対して顕著に気づかされます。最もリターンが大きいのは創業社長ですが、それは最もリスクが大きいという反対の側面があるからです。ベンチャー社長は「起業しないほうがリスクだろう」と断言したりしますが、鵜呑みにして安易に真似されないほうが良いと思います。一般的な起業戦士と、起業家はまったくもって別の種類の特性を持った人間だと思います。たまに近似種もいたりしますが、残っている人々の多くは、残るべくして残っている人々のような気がします。


一連のエピソードから私達が学ぶべきなのは、自分自身が死滅回遊しないためにはどのように生きればいいのか、ということです。死滅回遊を避ける、泳いでいる環境が危ないと感じた中でも生き残れるような地力を作る、このいずれかによって生き抜くほか、ありません。親から貰った命を繋ぐため、力強く、生きていきたいと思います。